AUTHOR
Daisuke Maeda
徳島生まれ旧吉育ち、釣りバカ3世。大阪でフリーランスデザイナーをしています。
好きな釣りはトップウォーター。魚の大きさは気にしない。フリ。夢はやっぱり湖のほとりの釣り具屋さん。隣は友人が営む喫茶店。桟橋のテラスで老後を過ごしていたいです。
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僕は良い釣りが出来た日のことしか話さない。
ダサイなと思う。そういう自分のダサイ一面と向き合うことにこそ、魚釣りの本質があるわけで…とか、垂れておいてから。
この日のことはおそらく一生忘れられない思い出になる釣行なので書いておこうと思う。
友人と二人で行ったダム湖での話。
「今日はこれで釣りたい。」と、まず一番にぶらさげたヘドンのマグナムトピード。
過去にこれでよく釣っていたので、仲間からは「またマグトー?笑」なんて言われてしまっていた。
昨年はほとんど自粛して出番がなかったルアーだ。(ボックスには入っておりました。)
今回、このマグナムトピードはつい先日スミス社からリリースされたばかりのスミスファクトリーカラー。
そのうちの一つのカラー[L]にときめいてしまった。久しぶりにマグナムトピードで釣りをしたい。
昨年は意識的にプラスチック製のルアーを避けてウッドや発泡素材のプラグを使っていたので、改めてプラスチック製プラグの違いも確かめたいという格好をつけた言い訳も添えておきます。
14時ごろ、のんびり船を出し、いつも通り日陰に沿って下流へ向かうコース。
少し下ったゴロタ岩の続くストレッチでそのマグナムトピードに幸先の良いバイト。
が、ルアーは浮いたままフッキングには至らない。
「まぁいつものこと笑」と同船してくれた友人と笑ってキャストを続けた。
この調子だと良いエリアに入れば魚は釣れる。と、この時は余裕をかましていた。
そこからまた少し下った先でのミスキャスト。ラインが枝に引っ掛かってルアーがちょうちん気味になってしまった。
僕は出来るだけプラッギングをしたいので、ちょうちんのまま誘うことは普段からあまりやらない(ようにしている)。
糸を外そうと竿をはらった動きに不意打ちのバイト。
40cmはあるバスがフックアップしたものの、船縁でジャンプ一発のさようなら。
そう。今年は『自分ルール』で全てのフックをバーブレスにするという課題を設けて釣りをしている。
バーブレスにするかっこいい理由は釣りをしながらまだ考えているところ。
その後、1時間以上ノーバイト。
下流へ行けば行くほどシャローは鯉のスクールと理由の分からない沖での激しいハタキが頻発。
あまり経験したことがない異常な頻度のコイのハタキ。
これがバスの活性に影響しているような気がしてきたので対岸へ渡って上流へ引き返すことにした。
※あのハタキの原因誰か教えて下さい。
上流に向かうにつれて鯉の数は減ったものの今度は大量のベイトがワンド内で平和そうに水面をちゃぷちゃぷやっている。これだけベイトがいれば何かあるだろうと。
友人はダーター。僕はダブルスゥィッシャーに変えてボイルを誘発させるつもりで辺りを探ってはみるが何もない。
逆にペンシルベイトか?と広く探るも何もない。
ここでふと、何度か二人で打ったはずの岬の先端に目をやると20〜30cmぐらいのバスが10匹ぐらい浮いている。
「おいおい何か反応してくれよ笑」
すると同船していた友人が「今日は満月大潮ですよね?」と。そうだった。
『満月の日は真夜中と真昼間にマヅメどきがある』って昔ラリーニクソンが言っていたのを何かで見たことがある。
「ラリーニクソンが言ってるなら間違いないね!笑」と。
異常な頻度のコイのハタキと晴天なのに平和そうに浮いている大量のベイト。
このフィールドではあまり経験したことがないので何か関係がありそうだ。
「なんだよ満月大潮の日はもう来なくていいね笑」とか冗談を言っていると、
ポーズさせていたペンシルベイトのすぐ後ろで水面が盛り上がった。魚が付いた!
すぐに誘い直すとまた大きな引き波がついてきた。
…でかいぞ!食え!…
水面の水と空気を一気に吸い込むあのバイト。
「ライギョだ!」強烈な引きをなんとかクラッチでやりくりしながらランディング。
中学生ぶりのスペシャルゲストに少し興奮しながらもやっぱり今日は何かおかしい。このフィールドでライギョを見たのは初めてだった。
その後、同船してくれた友人もバイトはあるもののフックアップには至らず、どうもバスの活性は低そうだ。
「やっぱり一匹目のあいつ獲っておかなきゃいけなかったな〜笑」
「たしかにラリーの言う通り日中はまだ活性が高かった気がするね笑」
そして上流に戻るにつれコイのハタキも少なくなった。
「やっぱり今日は上流だったかもなー。」
日中、最初に良いバイトをもらったゴロタ岩の続くストレッチへ向かう。
ラリーの話が少し気にはなるが、何かあってくれよという期待を持って夕間詰めに差し掛かった。
確かこの岩の根っこあたり。
ルアーはマグナムトピード。正確に落としてポーズ。ワン、ツー。ルアーを左右にターンさせると、猫が動く物を押さえ込むようなタイミングでバシャ!
「出た!」フッキングも決まりゴリ巻きで一気に手繰る。サイズはそうでもないが一匹獲って帰りたい。
友人もネットを構えてくれている。このままジャンプせずにネットに入ってくれ!
魚はそのまま見事にジャンプした。綺麗に。美しく。友人の構えたネットの上を飛び越えながら針は外れた。
「うわー!」「バーブレスなんかイキってるからですよ!」笑うしかなかった。
ため息で肩は丸くなりきった。
ボートは少し沖に流されていてこのまま同じサイドを打ちに戻るか、対岸のシャローへ移るか。もう帰るか…。
すると先ほど魚を掛けた岸でボイル。「こっちだな!」
上流からの流れを蛇行した岸が真正面で受ける辺り。二人ともなんとなくこのエリアに魚っ気を感じていた。
進行方向に見えるほんの少し岸から崩れたような岩の脇を目掛けて、マグナムトピードをオーバーヘッドでキャストした。
少しポーズさせ、軽くターンさせた瞬間、静かにルアーが水中へ吸い込まれた。
糸を巻き取り、魚の重みを感じてから強くフッキング。
「のった!」同時に魚が沖へ向いてジャンプ。
両目のピントと脳が追いつくよりも早く手が動いていた。声が出ない。
操船してくれている友人が後ろから「デカイ!これアカンやつっす!」
1回目のジャンプは耐えてくれたがこれはサービスだ。掛かり所を確認するまで安心はできない。下へ深く突っ込む。糸が擦れてしまうような根が何も無いことを祈りながら捌く。
しばらくすると今度は糸と水面の接点が上にグーングーンと向かいはじめた。「飛ぶぞ!」クラッチを切って糸を出してやると魚はジャンプするのをやめてくれた。
ゆっくり魚がこっちを向いた時、魚の口に掛かったルアーが見えた。フロントフックがカンヌキあたりに掛かってはいるものの、糸がリアフックに絡まった状態になっている…。
正直この時、だめだと思った。魚は右を向いた。右か左、どちらかに引っ張ればリアに絡んだ糸がフロントフックを引き抜いてしまいそうだ。竿先の流れに任せ、一か八かそのまま右に力をかけて勝負。針はまだ掛かっている。
これを耐え凌いだとしてもまたネット際でジャンプするに違いない。
魚が少し浮いたスキをとらえて友人が構えてくれているネットへ向かって一気に魚を寄せる。
「たのむ!ジャンプするな!一発で決めてくれ!」
「はいった!!」間一髪。フックは簡単に外れた。
「こんなに大きく無くていいんだよ!」と言いつつもスケールを取り出す手は震えていた。
この魚は自己記録の大きさとなった。
大きく歯型の入ったマグナムトピードを眺めながら、潰した針のカエシを指で撫でてみる。
たったわずか数ミリの針のカエシに宿る力は偉大すぎる。『魚を獲る』ということにおいて、人類の知恵が詰まったその針先を簡単に潰してよいわけがないのだ。とはいえ、魚釣り、『楽しみ方』ということにおいて、それは自由だ。
もとい、『トップウォーターオンリー』というスタイルを選んだのもバスフィッシングの『楽しみ方』の一つとしてだ。
トップウォーターを『楽しみ方』と言うのならもっと試してみたいことがまだまだある。
ただ、もしこの魚を目の前で逃していたとしてもそう思えたか、疑問は残るが。笑
だって、やっぱり、ジャンプこわい。
TACKLE DATA
ROD : SMITH / SuperStrike SS-WS51MM
REEL : ABU / ambassader 4601C Gunner
LINE : Nogales / DEAD OR ALIVE Taflex NYLON 16LB
LURE : HEDDON / Magnum Torpedo,SMITH Factory Color [ L ]