先行のフライフィッシャーの方にお聞きすると「朝二本あがったよー。一本はフライで、一本はルアーで」。そして水面に「モワっ」と浮き上がる魚のシルエット。絶望的な状況から急に光明がさしてくる。
河口域なのでかなり潮の影響を受けるエリア。時合いは朝まずめ、夕まずめもからんで複雑だけれど、やはり上げの方が調子は良いそう。でも、もちろん初めてのフィールドだからそんなことは気にせずとりあえずは撃ちたい。なんといっても憧れの景色がすぐ目の前にあるのだから。
川幅は広くてフルキャストしても流心に届くくらい。ウェーディングで入ると下は泥池で急に岸際の足元から深くなる。ディープウェーディングは危険だ。気温は10度くらいで、凛とした心地よい緊張感のなかキャストを開始。アップクロスでフローティングのミノーを流していく。
ただ、ひたすらにキャストを繰りかえす。少しレンジを下げるとウィードが付いてくるので釣りにくいが、一投一投丁寧に外しては投げ。外しては投げ。昼頃に一度陸に上がって即席のラーメンをタカヤが作ってくれた。暖をとってまたフィールドへ戻る。ルアーには反応がないけれど、午後になってときおり現れるライズに法則性を見出しはじめていた。
「岸際のブレイク沿いでライズしている」
昼は物陰やストラクチャーに潜んでいて捕食するイメージだけれど、実際にはゆったりとした近距離の回遊をしているらしく、定期的におこるライズの位置は違うけれど、岸からの距離はほとんど変わらない。ブレイク沿いをきっと回遊しているにちがいない。少しだけウェーディングの位置を深くしてアップクロスからアップストリームに変えて上流に上がりながら探っていくことに。
天候が急変して大粒の雨が落ちてくる。水と空気が一体化するなかキャストの音しか聞こえない。「ヒュッ」「ヒュッ」という風切り音。時間が何時間たったのか、何投したのもう考えないままキャストを続ける。暫くすると雨は上がったらしいのだけれど、正直後で写真を見返すまで雨があがったのに気がついていなかった。覚えているのは人口の音が一切しない、連続するキャストの音だけ。
気がつくと日が落ちかけていた。まだ後1日半の日程が残されているから無理しないで明日の朝マズメを狙おう。暗くなる前にテントも設営しなければならない。タカヤと梅ちゃんは「先にあがるね」と声をかけてくれた。自分も手を降って「あと少し、気になるところを打ったらあがるね」と言ってキャストを続けた。いままで通せなかったコースを通したかったのでディープウェーディングになるけれど、深場に慎重にポジションをとる。ちょうどこの写真のコースだった。
アシ際で少し水がよれている場所が続く。他の場所より深いようで、クロスで通した時にはウィードがかからなかった。このコースをアップストリームでゆっくりと流していく。ルアーは濁りの水でも見えるように黒xゴールドのミノーをセレクトしてボトム付近を探る。
一投。二投。
そして三投目。その瞬間が突然訪れる。
アングラーが求めて止まないもの。全ての時間が止まったかのようなその瞬間が。
TACKLE DATA
ROD:DAIWA LATEO 86LL
REEL: DAIWA CERTATE 3012H スタジオオーシャンマークハンドルノブ
LINE:PE1.2
LEADER:フロロカーボン16lb
FIELD DATA
猿払川
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