いつだってその瞬間は突然にやってくる。
流れと同調していた筈のルアーの動きが一瞬止まって、身体中の毛が逆立つ。
間髪入れずに合わせを入れるとラインは本流側に向かって走りだす。想像していたよりもトルクフルな引きに、心拍数が跳ね上がって自分でも焦っているのがわかる。正直今回の釣行で釣れる可能性は限りなく低いと思っていた魚だけに、この一本の貴重さは自分自身が一番良くわかっている。
「絶 対 に バ ラ せ な い !」
PE1.2号に16lbのシステムが切れることはないと思っていたけれど、イトウ釣りは紳士協定でシングルフックのバーブレスフックがデフォルト。フックアウトの危険は常につきまとう。神経をすり減らすファイトの始まり。
本流側に走った魚は反転して急に岸際のアシへ目掛けて方向を変える。これは魚が自分の方に泳いでくるコースになるのでラインテンションが抜けてフックアウトしやすい。急いで竿を立て巻きながらテンションを保つと魚が足元をすり抜けて下流へ泳いでいく。無理はできないのでテンションを保ったまま自分も下流に移動しながら魚との距離を詰めていく。
水面を割って、白い魚体が見える。イトウだ。先行で入っていたパーティーのアングラーが異変を感じで近づいて来てくれた。
先:「おお、釣れてる!いいサイズだ。タモ持ってる?」
自分:「もも、持ってません!」
先:「ちょっと待ってて」
先に上がっていた梅ちゃんとタカヤに「仲間が掛けてるよー」と声をかけてに行ってくれた。もうウェーダーを脱いでいた二人だったけれど、急いでウェーダーを履いて駆けつけてくれた。(後で聞いたら、ウェーダーの着衣時間自己新記録だったそう)ロッドを持ってもらってハンドランディング。ようやくこの手にイトウを抱くことができた。優しい女性的な表情をした美しい白い魚体。
魚を釣って足が震えるのは久しぶりだった。二人も自分のことのように喜んでくれている。たった一匹の魚がこれだけの感動を与えてくれる。
魚は岸に上げることなくリリースすることにした。もう、この感情だけで十分だった。早く彼らの住むフィールドに戻してあげなければ。
悠々とした泳ぎで水中に戻っていく魚体。
リリースしたあと、自然と出た来た言葉は「ありがとうございました」だった。梅ちゃんにタカヤに、サポートしてくれた先行のアングラーに、イトウに、豊かな道北のフィールドに、釣りそのものに。感謝の言葉しかでてこなかった。
動画を撮ってもらっていたのは全く気がつかなかったのだけれど、梅ちゃんがその時撮影していた動画を編集してくれました。
今こうしてブログを見ていても、少し泣けてくる。そんな一生の思い出に残る魚に出会うことができた瞬間だった。
TACKLE DATA
ROD:DAIWA LATEO 86LL
REEL: DAIWA CERTATE 3012H スタジオオーシャンマークハンドルノブ
LINE:PE1.2
LEADER:フロロカーボン16lb
FIELD DATA
猿払川
COMMENT
RELATED ENTRY
RANKING
POPULAR TAGS
- フライ (1)